『燃えつきた地図』(1967年)

燃えつきた地図 (新潮文庫) 作風は『砂の女』と、まあ、同じ。主人公の男には「言っていることはわかるけど、態度が傲慢」と思いつつも、日常の場面で心中で思っても口には出せないことを代弁してもらったかのような開放感を持ってしまう。

砂の女』ほど物語はエキサイティングでない。調査依頼の人物は見つからないのだろうという先入観がすでに私の中でできあがっている上に、とくに登場人物が切羽詰るようなこともないから。物語の展開よりも、各シーンで挿入される比喩や諦観のコメントに感心したりしなかったりするような感じだ。

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