『鼠−鈴木商店焼打ち事件−』1975年

ISBN:4167139014
大正7年、一介の商店から三井・三菱と並ぶ大商社となった鈴木商店の栄枯衰退物語

  • 鈴木商店が米を買い占めている」という噂の真相が「みんながそう言ってたから」程度の根拠で、米騒動のターゲットにされた鈴木商店は貧乏くじを引いた
  • 「一人の馬鹿は一人の馬鹿でしかないが、大勢の馬鹿は歴史的な力である」の典型例
  • 鈴木商店の大将、金子直吉の電波ぶりが興味深い。賢人政治の典型例。電波とは言っても、嫌悪感を催すような電波ではない
    • 自分の価値観を過信し、引き際を知らない。ただし、彼の経験と先見は、大方において正しいので、好調なときは本当にうまく行く
    • コントロールフリークで、やはり引き際を知らない。ただし、自分が他人に任せられると思った分野には干渉せず、全力を尽くした上でのミスには寛大であったため、会社の成長期にはそのコントロールフリークぶりも大して障害にならなかった
    • 朝日新聞のでっち上げに「自分の良心には全くやましいところがないので無視」という態度にも、個人的な社交のレベルの話ならとても賛成できる。しかし、マスメディアの馬鹿力の恐ろしさに対する無理解と、個人レベルと企業レベルじゃ話が違うんじゃ?と疑ってみるところがなかったのが致命傷となった
    • 慈善に関する考え方にはとても賛成できる。貧しい者に金を与えるのではなく、できるだけ多くの人が働いて自立するための雇用機会を作り出すことが企業の使命
  • 小松伸六の解説はよくまとまっている。タイトルが地味なのは私も不満だ

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城山三郎